アメリカ保守革命
この本はかなりおすすめです。内容はアメリカの保守化がどのようにして起こっているのかを説明した新書。アメリカ共和党内のイデオロギーを説明する。
バーク流の伝統主義者と経済的な自由主義を手段とするリバタリアニズムは融合し、フュージョニズムに結合した。また民主党から来たネオコンサバティズムneo-conservatism(ネオコン)は共和党内の一大勢力となっていく。ネオコンに伝統主義者であるペイリオ・コンサーバティズムpaleo-conservatism(ペイリオコン)は戦いを挑むが近代科学で武装したネオコンに敗れてしまう。
内容はこんな感じでかなり詳しくアメリカの潮流が見えてくる。特に日本で言われているリベラリズムやネオコンとアメリカでのリベラリズムやネオコンと言われている人々の差が解るだろう。日本ではレッテル張りに使われているとしか思えない。
_ | リベラリズム | 保守主義 |
---|---|---|
権威 | 平等主義 | エリート主義 |
_ | 階級をなくすために政府の力を利用することを主張 | 少数リーダーの存在を容認 |
_ | _ | 指導力と影響が社会を安定させる |
_ | _ | 秩序ある権力を評価 |
経済 | 社会主義 | 資本主義 |
_ | 社会保障を強調 | 私的所有権を重視 |
_ | 私的所有権の制限 | 利潤動機を肯定 |
_ | 政府による介入、規制 | 個人の経済活動を評価 |
国際 | 理想主義 | 現実主義 |
_ | 国際的な共存を強調 | パワーポリティックス |
_ | 国際機関を評価 | 軍事力を重視 |
_ | 相互信頼 | 人間の本性に依拠 |
_ | _ | 条約・協定を信用しない |
_ | _ | 国際機関を評価しない |
政治 | 平等主義 | 自由主義 |
_ | 結果の平等を重視 | 機会の平等を重視 |
_ | _ | 幸福を追及する自由 |
_ | _ | 政府介入からの自由 |
ポピュリスト | 平等主義 | 道徳主義 |
_ | 富の再分配を主張 | グラスルートの活動を評価 |
_ | 反ビジネス的 | 人工中絶や同性婚に反対、反ERA(反男女平等憲法修正) |
_ | _ | 学校での礼拝などの奨励 |
宗教 | 相対主義 | 正統主義 |
_ | 神や絶対的な価値を否認 | 神の絶対性を主張 |
社会 | 変化重視 | 秩序重視 |
_ | 社会的な変化を評価、進歩とみなす | 急激な変化よりも秩序維持を評価 |
アメリカ保守革命P9
Charles W. Dunn, J. David Woodard, The Conservative Tradition in America. P.31
_ | リベラリズム | 保守主義思想 |
---|---|---|
【1】政府 | ||
主要な政策の対象 | 個人 | 共同体 |
指向する政府 | 中央政府 | 州政府と地方政府 |
政策の方向 | 国際主義者 | 国家主義者 |
影響行使の手法 | 直接的な行使 | 間接的な行使 |
政府の説明責任 | 人に対する説明責任 | 神に対する説明責任 |
変化の速さとタイプ | より速い変化/ユートピアな変化 | よりゆっくりとした変化/規範的な変化 |
相対的な重要性 | 平等 | 自由 |
政府が実現する正義 | 政府による改革 | 精神的な改革 |
【2】経済 | ||
政策の主体 | 中央政府 | 市場 |
成長部門 | 公共部門 | 個人部門 |
政府の機能 | 政府による規制 | 競争促進 |
傾向 | 社会主義的傾向 | 資本主義 |
【3】文化的価値と宗教的価値 | ||
知識の究極的な源泉 | 理性 | 自然/聖書 |
聖書の解釈 | 象徴的に解釈 | 原文に忠実に解釈 |
道徳的基準 | 相対的/状況的 | 絶対的/正統的 |
重要な存在 | 人間 | 神 |
道徳的な重要性 | 社会 | 個人 |
人にとっての重要性 | 権利 | 責任 |
悪の起源 | 不正な社会システム | 原罪 |
この一文は加藤尚武現代倫理学入門からとったもののようだが、実はこの加藤尚武という人はミルの考えを基準として書いており、世に言うリベラリズムではなく、むしろリバタリアニズムに近い主張をしている。
■リベラリズムと保守主義の意味
リベラリズムと保守主義というのは結局の所、種々のイデオロギー(社会集団の政治思想)から抽出した理念的な意思決定、現実的な意思決定という程度の意思決定の分類に過ぎない。極端にイデオロギー的あるいは意思決定的に偏っているのでなければ、比較的妥当なものと認識される。
モーリー・ロバートソンが批判されたりアンチサイトができているのはモーリーの極左っぽさを感じ取るからだろう。自分では極右(明らかにバランスを欠いた保守主義)や極左(明らかにバランスを欠いたリベラリズム)とみなされた場合、その言説を唱える人間自身も否定されてしまうといいながら、中立的な見方ができていない所がある。歴史認識の点は日本の極左とかなり近い立場を取る。
一方ミッキー安川の朝まで勝負などにはたまにゲストにかなり右によっている人が来たりする。それでもモーリーやミッキーを聞き続けるのは、圧倒的にトークが面白いからである。ミッキーとモーリーを両方聞いてる人っている?
自分の立場としては中道の立場を取るようにしているが、そのために保守主義のバイアス、リベラリズムのバイアスとの距離を測るようにしている。人間が人間である以上心理学的なバイアスから逃げる事はできないから、大量の情報をいれて判断していくしかない。